女の子にとって雛人形というのは特別なもののようです。私は残念ながら息子しかいませんが、従姉妹が女の子を授かったので、いろいろと相談を受けている内に随分詳しくなってしまいました。
その時感じたのは、雛人形が特別なものであるからこそ迷信のような言い伝えも気にしてしまう人がいるということです。
今回はそんなあれこれに縛られない男の立場から、雛人形の在り方について考えてみたいと思います。
雛人形は身代わりって本当?
丹精込めて作られた品で、丁寧に扱われてきた雛人形であれば、何世代も引き継ぐことが出来ることでしょう。そして、母から娘へと代々受け継いで欲しいと思うのは当然の心理だと思います。
ところが、そんな思いに水を差す考え方もあるんですね。「雛人形は身代わりだから…」
そこに隠された意味は「身代わりとなって災いを受け止めてくれるのが雛人形だから、娘に引き継いだりしたら災いが降りかかりますよ」というものです。
これ、何かおかしいですよね。
だって身代わりだったら、一度災いを受け止めてくれたらもはやお役御免のはず。娘の代まで待たずして、お役御免になった後は災いが降り掛かってきそうです。
それとも、雛人形というのは縁があって結ばれた相手を生涯守りきるというとてつもない力を持っているのでしょうか?残念がらあり得ません。どこかのタイミングで浄化しない限り生涯守りきることは不可能なんです。
確かに、雛人形の由来を紐解くと、神社や皇室で行われていた大祓(おおはらい)という儀式に行き着きます。要は厄除けのおまじないで、人形(ひとがた)に災いや穢を移して川に流したとされています。
それならば分かります。身代わりで災いを受け止めてくれた雛人形を川に流すならまさに身代わりです。
でも、毎年飾るものですよね?それが身代わり?人形屋さんの商売上の口上だと思うのは私だけでしょうか?
実は私の従姉妹も、とあるお店でそんなことを言われてきました。
自分の雛人形を娘に引き継いで欲しいと思う気持ちがある反面、やっぱり娘には新しい雛人形を買ってあげたいという気持ちも強かったみたいで、とりあえず下見に行ったらそんなことを言われたと…
もしその話が本当だとするならば、すべての雛人形に神主さんがお祓いをしていることでしょう。いえいえ、それだけでは足りません。何十年と一人の女の子(女性)の身代わりをつとめるのですから、とてつもない秘技が封じ込められているはずです。
お店に展示されている雛人形に、そんな神聖さを感じますか?
雛人形は一人に一つなの?
雛人形が身代わりだとする考えの延長線上にあるのが、雛人形は一人に一つという考え方です。なにしろ身代わりですから、一人しか守ることが出来ないんですね。
一人に一つを考える必要があるのは次女・三女と女の子が続く場合だと思います。私の従姉妹は一姫二太郎だったのでそこまで考える必要はなかったのですが、そもそも身代わりという考え自体が迷信だと思うのです。
前章でも触れた通り流し雛なんかだったら分かります。あぁ、身代わりの人形なんだなって。
でも、ひな壇に飾るお雛様は流し雛なんかではなくて、嫁入り道具の一つなのではありませんか?一生大切にするべき宝物だと思うのです。その宝物を我が子に引き継ぐことが出来ないとするなら、とても悲しい事です。
仮に、雛人形が身代わりだとしましょう。そしてその雛人形を毎年飾って「いつも見守ってくれてありがとう」って言葉をかけていたとしたら、その言葉だけで浄化されている気がします。
もしも、数十年に渡って身代わりとなり災いを受け止め続けてくれる雛人形が存在するとしたら、それはそんな持ち主の思いやる気持ちが奇跡を呼び起こしているのでしょう。
そして、その気持が子供にも備わっているなら、雛人形は2代に渡って守り続けてくれるに違いありません。
一人に一つなのではなく、大切に思い続ける気持ちに対して一つだと思うのです。
雛人形を母から娘へ!
「雛人形は身代わりだから一人に一つって言われたよ」
そんな言葉を従姉妹に聞いて、「そう言わないことには商売が成り立たないのだろうな」と思いました。
雛人形はそれなりのお値段ですし、人形ってやはりとても大切に扱うものですから、2代3代は普通に引き継げると思うのです。でもそれだと全く商売にならない。
2世代が3世代に一つ売れるのと、1世代ごとに売れるのでは儲けが全く違いますからね。
ただ、ここで焦点とするべきなのは、その言葉を真に受けるのか、ただの口上として受けるのかの違いだと思うのです。
もしも真に受けてしまったなら、新たに雛人形を買うべきです。
もしもただの口上として受け止めたのなら、母から娘へ引き継ぐべきです。
これは、今後何十年における気持ちを考えた場合の結論です。
雛人形は一人に一つって言葉を真に受けたにも関わらず、高価だからとか今ある雛人形がもったいないからとかの理由で娘へ引き継いだとしても、毎年飾る度に心にひっかかりがあるでしょう。「確か雛人形は一人に一つだった…」と。
毎年そんな思いをするなら、いっその事奮発して新しい雛人形を購入するほうが遥かに精神衛生上いいですし、子供だって喜ぶことでしょう。
でも、ただの口上としか受け止められなかったなら、もう絶対に自分の大切にしてきた雛人形を娘へと引き継ぐべきです。きっと子供と人形との素敵な出会いがあるに違いありません。
梨木香歩さんの小説「りかさん」の世界みたいな。
えっ?私の従姉妹は結局どうしたの?ですか。彼女はとってもドライな性格で、お店で聞かされたことは全く信じていなかったので、自分のお雛様を娘に引き継ぐことになりました。
今ではその子も随分大きくなりましたが、母親から受け継いだ雛人形がとても気に入ってるみたいです。
ちなみにその従姉妹は、小さな頃に私が買ってあげたぬいぐるみをいまだに大切に持ってます。そしてそのぬいぐるみも娘へと代替わりしたのだとか。
そこまで大切にしてもらったら、たとえ雛人形でなくても身代わりになってくれそうですよね^^v。
まとめ
今回は、私の従姉妹との話をベースにして、雛人形について考えてみました。
あくまでも男性の立場からの見解ですから、もしも不快に思われることがあったならお詫びいたします。
ただ、人形を大切に思う気持ちに男女の違いはないと思っています。
新井素子さんの様に、ぬいぐるみの機嫌がわかるほどではありませんが、人形やぬいぐるみを見たときに大切にされているのかほったらかしにされているのかくらいはわかります。
そんな立場からの記事でした。楽しんでいただければ幸いです^^。